1 売上計上および費用または損金扱いの範囲について
Q ソフトウェア販売の際の売り上げ計上基準と税の扱いについてご教示ください。
A 先ず税務上の扱いですが、当地では物品販売か、それともサービスの提供(受注生産販売を含む)かに2分されます。前者では付加価値税の発生点が引き渡し時であり、源泉徴収の対象外、後者では付加価値税の発生点が対価の回収時であり、源泉徴収(3%)の対象となります。ソフトウェアの場合、小売店で販売されているパッケージ・ソフト以外はカスタマイズも含まれる受注生産品と見做され、後者の扱いとなります。
 売上計上は、使用期間の定められたものは期間に従って分割計上され、それ以外はサービスおよび受注生産が完了した時点、引き渡しの時点で一括計上されます
Q 損金として扱われる福利厚生費の範囲について教えていただけますでしょうか。
A 判断基準は、社員全員に等しく提供できるかどうかです。例えば私設の医療保険であれば、条件に差は設けても社員全員が加入するものならOK、社員旅行費用も定められた範囲内ならOK。ゴルフ会員権の様に一部の者しか使用できないと解されるものは計上できません。

2 付加価値税について
Q タイの付加価値税には、日本で話題にされているような軽減税率があるのでしょうか?
A 軽減税率ではないのですが、付加価値税の発生しないカテゴリー、発生するが0%というカテゴリーがあります。前者は生鮮食料品、医療費、薬品、教育費、書籍であり、これらの流通やサービスを提供する機関に付加価値税登録の義務は無く、後者は輸出品であり、付加価値税登録業者としての義務を負い、売上も申告義務がありますが、税額は常に0(ゼロ)という扱いです。この場合、仕入の際に支払った付加価値税は還付対象であり、相殺相手としての売上に付随する付加価値税がゼロなので、時機を見て還付請求の手続きをします。
 付け加えますと、前者の付加価値税非登録機関は、仕入や費用支払時に支払った付加価値税の還付請求はできません。さらに同一機関の収益の一部が前者であり、付加価値税登録業者である場合には、前者と付加価値税対象の売上高を按分し、仕入や費用で支払った付加価値税のうち、付加価値税対象売上高の割合に限り還付請求が可能です。

1 1 費用または損金扱いの範囲について
Q 通常、マネージメントに関わる日本からの出張費用を現地法人の損金とするのは難しいと聞いています。工場立ち上げの期間、技術支援者の出張は必須と思いますが、この場合は損金扱いにならないでしょうか?
A 仰る通り、工場立ち上げから稼働までの期間に技術支援者が日本から派遣されるのは必要なことと認識されています。これを問題なく損金扱いとするため、親会社との間で契約書を交し、出張者名、期間、業務内容、費用種別と算出根拠を明記してください。またその都度ご提出いただく証憑にも当契約の範囲内であることを記入した伝票を貼付していただくと、処理にも間違いが生じません。
2 海外への送金に関わる源泉徴収について
Q 海外の法人に対してサービス料、販売コミッション、配当あるいは借入金返済などを送金するケースがあると思いますが、その場合の源泉徴収義務の有無、源泉徴収率についてアドバイスお願いします。
A 海外への利益送金に対する源泉徴収率はタイ歳入法上、指定された場合を除き15%となります。ただし配当送金に対しては10%、コミッションについては日タイ租税条約により免除されています。借入金返済の場合、金銭消費貸借契約書と入金した際の証明により、支払利息の15%のみ源泉徴収の対象となります。
 また、源泉徴収された額はタイの税務署に納税される訳ですが、源泉徴収を受けた外国法人は、外国税控除として日本の法人所得税からの控除が可能です。タイ税務署に英文証明書を申請取得し控除の際に使用します。

3 金銭回収におけるトラブルについて
Q 商品やサービスに対する支払が滞った場合、不払い者に対抗する方法はありますか?
A まず、支払が遅れるにしても先付小切手を振り出して貰うことが肝心です。タイには信用情報という制度が無いため、不渡り→倒産ということもありません。従って現金化できなかった小切手は宙に浮いてしまいますが、これを補完する対抗手段があります。小切手の額面が5万バーツ以上であれば、記載された期日を過ぎ現金化不可能なことを確認した上で、管轄警察署の商業部に持ち込み簡易な訴えを起こします。警察は1週間程度で振出銀行に対し有効な小切手である旨を確認した上で、振出人に出頭命令を出し、出頭のない場合は身柄を拘束します。そこで債権者も連絡に従い出頭し、留置を求めることも可能ですが、起訴手続きをされれば肝心の回収が遠のいてしまうので、警察官立会いの下に示談をするのが普通です。これが半ば強制力となって、大抵は解決します。小切手が振り出されないケースでは、対抗手段は訴訟のみ、ということになります。