1 駐在員の合算申告について
Q ここ数年、俄かに駐在員の日本給与も加算し確定申告をする企業が増えていると聞きますが、具体的な処理方法についてご教示ください。
A 当地に於いても、すでに15年ほど前より当局は外国人駐在員に対しこの合算申告を求める動きを開始しています。とはいえ、当初は海外での所得を調査するシステムも確立できていなかった為、可能な範囲の各企業に対するインタビューを通し、企業規模や職位ごとに予測した所得をベースに推定課税を行うというレベルでした。しかしここ数年では、各国の税務当局が連携し個人所得のデータを求められれば直ちに公文書で送付するシステムが確立し、データにより証明した上で追徴課税を行う様になりました。この動きに沿い各企業の意識も変化し、最近では合算申告は当然の義務という認識が定着しつつあります。
 処理手順は、①日本給与を親会社負担のまま合算申告する場合と、②親会社が日本給与を立替支給し、後に現地法人が立替精算をする場合で異なります。
①の場合、毎月の源泉申告においては現地給与のみを申告し、翌年2月までの確定申告時に日本給与を加算し不足分の個人所得税を納税する方法と、月次源泉申告時に予め合算し申告するという方法から選択できます。
②の場合は、必ず後者の方法を取らなければなりません。
確定申告時には、親会社から源泉徴収簿を送付、これを英語あるいはタイ語に翻訳し、当地の税額控除を元に税計算を行い申告します。
微妙なケースとしては、すでに駐在期間が複数年に及んでおり、昨年までタイ給与のみの申告で済ませてきた場合です。調査を受ければ当然のことながら、過去の申告はどうなっていたのかという疑問が生じるので、正しい申告を行ったことで藪蛇になりかねないという訳です。調査を受ける可能性もケース・バイ・ケースで予測不可能なので、残りの赴任期間等を考慮し各企業で判断するしかありません。

2 減価償却基準の変更
Q つい最近、設備資産の減価償却基準に大きな変更があったと伺いましたが・・
A はい。以前は設備資産取得原価を、単純に予測できる耐用年数で定額法による償却を行ってきました。従って車両や事務所備品は5年、建物は20年等々、全企業共通の基準であったのですが、新基準では償却後売却した場合の市場価格を予測し残存簿価と定め、その差額を耐用年数で償却するという方法を取ります。変わった税収増政策ですが、例えば工場設備の場合、高額の設備であってもその企業あるいは特定の製造品にしか使用できない専用機もあり、これらは市場価格=スクラップとしての売価しか設定できず、しかも会計監査人や税務官もこの様な知識は皆無であるため、市場価格の設定で問題が生じる可能性が高いでしょう。