2012年4月付レポートにて2011年洪水被害以後早期復興を果たした日系製造業、および安定した投資先として地位を保っているタイの状況につき報告した。日本の経営環境、例えば電力供給、光熱費高騰、被曝可能性や解雇規制等々の運営リスク増大も相俟って更なる投資ラッシュを迎えている。
日本の銀行マンは新たな融資先確保を目指し進出企業向け情報収集に駆け回り、洪水被害の無かった東部地域の工業団地では軒並み工場建築が進んでいる。それぞれの工業団地はさらに用地を買収、急速に開発を拡大している。

現在の進出企業のメインである一次~3次サプライヤーが通常進出する場合の選択肢はタイ、中国、ベトナム、インドネシア、そして新たに注目され始めたミャンマーがターゲットとされる。ただご承知の通り、中国はすでに人件費他すべての費用が高騰し、また原材料不足から資材相場の投機化、また中国人の旺盛な起業意欲から、技術移転がそのまま現地の競合相手へと転化してしまう状態、インドネシアやベトナムは未だ大手メーカーが進出する為の技術レベルや環境整備が遅れており、ミャンマーに至ってはインフラの基礎整備にも依然不安が伴う。

その点タイは、昨年の洪水が障害とはなったが、海外慣れしていない中小企業の進出先として顧客確保、工業団地・交通網等のインフラストラクチャー、労働者・事務管理者の教育あるいは技術レベルその他の経営環境、生活環境のどれを挙げても大きくリードしている。
企業進出に当たり、先ず第一に必要なのは、現地におけるビジネスに精通した専門職やコンサルタント等の相談と情報収集の相手、そしてもちろん手足となって動いてくれる現地スタッフだ。例えば日本側独資で法人設立するにはどの様な形態を選択したら良いのか、または現地法人(タイ側出資率51%以上)を選択すべきか、土地を購入し自社工場を建築するか賃貸工場で操業する方法が有利で低リスクなのか?設立から法人運営までのスタイルには様々な選択肢があり、それは業種業態により個々の企業にとってそれぞれ違う答えが導かれる筈だ。
先ずスタートラインでどれだけのアドバンスを確保するこができるのか、この段階までの行動により以降の業績が大きく左右されるのは当然である。

またマネージメントにおいて片腕となるべきスタッフの雇用についても、プロパーの駐在者がローカルの通訳を雇用し管理を行うか、または現地語を学ぶのか、または現地採用の日本人を管理者として雇用する方法もある。
じっくりフィジビィティー・スタディーを行うことが肝要なのはもちろんだが、情報提供者は大勢いても、選択し決済を行うのは経営者なのだから、人任せで決めてしまうことは避けるべきだと思う。