法人所得税に関しては、日本に比べ損金と認められる費用の範囲が極端に狭く、直接的な業務関連性が要求される。接待交際費について云えば、売上高に対する割合が定められており、現在売上高又は資本金の0.3%、の内どちらか大きい額との規定である。

従ってサービス・請負収入が中心の中小企業にとってはほぼ無いもの、と言っても良い。超過計上分は確定申告時に益金算入し法人所得税を算出する必要がある。また働く外国人にとり必要不可欠である住居賃貸料は、法人名で契約を交わし会社負担しても、個人所得に算入し申告する必要がある。つまり最初から個人で負担する方が簡単、ということになる。

また税務調査の際によく指摘されるのは、外国人の為だけに費用負担する車両賃貸料、出張費、外国人の高額給与である。特に外国人を差別したり排除しようと考えている訳ではなく、単に指摘し易く税収増に結びつきやすいということだろう。但し、その企業が適正利益を計上し、法人所得税を支払っていればあまり問題にされない傾向にあるとも云える。

またその反面、最近日本の税務当局は在外関連企業に関わる国内法人の費用負担について、最重要調査項目としており、海外赴任者の給与は現地法人負担とせよ、また製造会社では技術供与、技術支援のための出張費も現地法人負担を求める。言ってみれば双方の税務署が税金の奪い合いをしているのである。技術支援に関わる費用については、その必要性や費用負担の範囲を明確に記した契約を交わすことでこれを免れる可能性が高い。

納税者の立場としては、「一体どうすれば良いのか税務署どうしで決めて欲しい」と考える。

また2000年会計法から採用されたものとして、グローバル化(国際会計基準に沿う意味において)の名の元に「市場価格制」「価格移転税制」という考え方が採用され、これも適正税収を得るためのルールとして定着している。

タイの税務で言う「市場価格制」とは、納税する法人が「税務側の調査の結果把握した、各業種業態における粗利率」(非公開)と比較して著しい廉価販売を行っていると認定した場合には、その差額について修正申告を求めることができる、という規定である。制度を拡大解釈し税収増に利用しているということだが、この場合の修正は売上高(法人所得税の追徴)とVAT(付加価値税の追徴)双方の修正に罰則金・延滞金が加算されるので、納税者にとって非常に厳しい結果につながるが、現実に日常茶飯の様に行われている。

また「価格移転税制」だが、通常海外に進出している親子会社間の取引において、価格を調整し不当に利益移転を行い納税を免れていると認定されると、こちらも同様に修正申告を要求される。この対策としては、製品価格算出についての基準を明確にし文書化しておく、という理論武装をし対抗すべきである。