当地の年次決算は、すべての株式会社に対し有資格者である独立会計監査人による会計監査が義務となっており、法人所得税確定申告書上に上記の監査人、および会計処理を行った会計責任者(4年制大学の会計専門学科卒、または公式の試験に合格した者)双方の署名が必須である。現在タイで稼働する株式会社は約100万社超。その監査を行う独立会計監査人は12,000人超で、まだまだ監査人不足の状態にあるが、政府は監査人を増加させる努力をしていると聞く。制度で定められたスケジュールは、年次決算および会計監査の進行に合わせ、先ず決算承認のための株主定時総会開催期日を定め、それ以前に当総会の招集通知を政府公認の専門誌に7日間掲載する。

掲載終了後かつ会計年度末日より120日以内に総会にて承認を決議し、決議後30日以内に確定申告および商務省への報告を行う。

現地法人設立の際には、日本本社の決算スケジュールも考慮の上、会計年度を定め、登録しておくことが望ましい。未登録の場合には、第1期決算を創業日から起算し365日以内に行い、第2期以降は自動的に同日が決算期日となる。

会計年度第2期以降の年度変更は管轄税務署の許認可事項であり、その審査も2~3か月に及ぶ。年次決算および会計監査過程での確認事項は多岐にわたり、まず決算においては2期に跨る費用および売上高の対象年度分割(特に長期にわたるプロジェクト、建築あるいは設備施工業務等の進捗基準による売上・原価算出は慎重を要する)、外貨建て繰越資産・負債の年度末日における為替レートによる洗い替え等々、さらに長期契約における契約内容と計上数値との照合、3年にわたり動きの無い繰越資産・負債の有無、あれば除外処理をすべきかどうかの判断、また最終段階では銀行預金残高、借入金・貸付金残高、大口取引先の売掛・買掛残高の双方確認書の作成、事後事象の確認等々が含まれる。

確定申告・商務省報告はほぼネット申告に移行しており、管轄税務署に出向く手間は解消した。申告および報告遅延に対する罰則金であるが、税務申告遅延に対しては1,000~2,000バーツ、もちろん納付遅延に対しては月1.5%の延滞金が加算されるが、高額納税者以外にとっては大した額ではない。それに反し商務省の対応はいささか前時代的で、報告後数か月を経てから罰則金納付の要請書が郵送され、ケース・バイ・ケースで数千~5万バーツまでとなっており、その算出根拠が明解ではない。もちろん期限を遵守すれば良いということだ。

また長期的な確定申告の懈怠やデータの改ざん、粉飾決算に対しては、現在の会計法(2,000年会計法)において会社代表者と並び登録された会計責任者(ブック・キーパー)に対し、悪質な場合は刑事罰まで定められている。

また独立会計監査人による外部監査というこの制度は、法人の作成・提出した会計・決算データの不正または誤りを補うものでは無いということを理解しておくべきである。