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面談の登場人物

BOI投資促進官 A氏  
同 B氏 
D社社長 E氏
D社マネージャー F氏
KOTRA D社担当職員   C氏        

A氏「こんにちわ。それでは御社の会社概要とタイで製造される製品とその工程説明をお願いします。」(タイ語)→ 私がF氏に通訳(日本語)→F氏がE氏に通訳(韓国語)

タイ国投資委員会(BOI)の面談会場でのこと。ここ数年は、BOIに関する業務は社員に任せきりとなっていたので、私が現場でお世話するのはしばらくぶりであった。今回縁あって、韓国企業D社の官公庁手続きに、工場の物件を手配するなど、すべて任せられることとなった。

元々D社は日系企業の取引先が多く、支社が大阪にもあり長きに亘って日本人付き合っていったE社長は、日本人の仕事ぶりや、日系企業に惚れ込んだ方である。またマネージャーであるF氏は韓国の外交官のご子息で、長期間学齢期を日本で過ごしたため、日本語はもちろん、英語も堪能な頼りになる若者だ。

事業を立ち上げる最初のステップとして、BOIの投資奨励事業認可申請を行い、先月申請受理。多忙につき私も時間の浪費が許されないため、培ったこれまでの経験を元に、担当官が疑問を投げかけるであろう点を全て網羅した申請書を作成し、1回で見事通過。
とはいえ、進出企業サポートは99%が日系企業に対するサービスを行っており、それ以外は過去に一度中国企業の申請をサポートしたことはあるが、韓国系企業というのは今回が初めてである。

その後インタビューは続き、タイ語→日本語→韓国語→日本語→タイ語の通訳の応酬プラス時折英語と、私の言語コンバーターもリミット手前状態。担当官A氏は、生産工程や使用される薬剤などについて執拗なまでといえる程詳しく聞いてくる。彼女は審査委員会で報告すべく、同社の生産に関する内容を詳しく理解しなくてはならない役割を担っているため、悪気は全く無く、
聞くのが当たり前というスタンスで質問しているのだが、質問される側のE社長としては、「今まで苦労して研究や試作を重ね開発したノウハウをすべて明らかにする必要があるのか?」と憤慨する場面もあった。しかし「そこはもちろん明らかにできる範囲で構いませんし、素人わかるように、アレンジしてお話しいただければ」と私の方で取り持った。その辺りは化学系企業にとって正にメシの種といえる部分なので当然といえる。

そしてさらに圧巻は、各工程でそれぞれ必要な薬剤を添加し、合計5段階それぞれ適した、マシーン設備で化学変化させるわけだが、
素人目にはどの工程も同じように薬剤をかき混ぜている様にしか見えないのである。そこでA氏は、「だったら始めから全部の薬剤をぶっ込み混ぜる方が早くないですか?」と衝撃発言。一同あんぐりとさせられたのである。一工程で済むものをわざわざ五工程に分けて製造する工場が世界中探してどこにあるのか、少し考えればわかるものである。しかしそこはさすがにA氏も場の空気を察して発言を撤回したが、危なっかしい場面であった。

そして2時間にも及んだ面談は無事終了。後は審査委員会の通過を待ちのみ。しかし実際はここからの道のりが長く、工場物件の契約、法人設立登記、工業省操業許可などが待っており、操業まで早くとも4~5か月後となるであろう。

前述のKOTRAとは、日本でいえばJETROといった感じの韓国政府の支援団体で、わざわざその担当者までが面談に立ち会いしてくれた。しかし、この日すべてを終えてA氏が今後の流れを説明してくれた一部分を、「なんて言ってたんですか?」とC氏が私に尋ねてきた。いやいや、タイ語からタイ語の説明を日本人に聞かないでくれよ