企業がタイに進出する際、殆どのケースが非公開株式会社に分類される(もちろん公開会社をいきなり設立することはあり得ない)。営利目的ではない駐在員事務所、地域統括事務所を設立する場合もあるがレア・ケースだ。さらに有限会社という形態もあるのだが、前回解説した労働許可証取得要件を満たせなくなるので、これは対象外と云える。したがって今回は、非公開株式会社に絞って解説しよう。

日本と同様、株式会社は、株式を発行することで所有権が分割され、各株主は引受株式の満額払込に限定された責を負う。ただし日本の授権資本金の制度(取締役会の判断で決定された授権資本金額の範囲内で、いつでも新株を発行できる)に対し当地ではこれを登録資本と呼び、発起人が資本総額を決定し、発行された全株式を株主が引き受ける制度となっている。初回の払込額は総額の最低25%を下回ってはならず、会社は株式を引受けた株主に対し、いつでも残額払込みを要求することができる。

会社設立の際、以下の登記事項を定める必要がある。①会社名②所在地③会社の目的(業種)、資本の50%以上が外国法人または外国人による出資の場合には外国人事業規制法で禁じられていない業種に限定される。④株主は法人・個人を問わず3名以上(氏名、住所、国籍、引受株数を明記)⑤発起人(3名以上の自然人)⑥取締役および代表取締役の署名登記、代表権者(単独または複数)の指定⑦付属定款(取締役会の開催、取締役の任命・解任あるいは株式、配当などの関する取り決め事を記載できる)⑧会社印の印影を登録し、代表権者の署名と押印により代表権を行使する。商業登記上、署名のみの登記も可能なのだが、殆どの銀行が社印登録を口座開設時の要件としているため、結果的に社印は必要。

株主の権利 ①株主総会出席の権利②株主総会での議決権行使の権利③代理人を選定し、議決権を行使する権利④会社が被害を受けた場合、被害が取締役の席によるものであれば、取締役に対し賠償を要求する権利⑤瑕疵ある総会決議の取消を裁判所に要求する権利⑥財務諸表開示を要求する権利⑦株主名簿開示を要求する権利⑧配当の支払いを要求する権利⑨株式譲渡の権利⑩株主総会議事録、取締役会議事録閲覧の権利⑪持株比率に応じ新株を引き受ける権利⑫残余財産分配を受ける権利。

株主は株式譲渡の権利を持っているが、付属定款に定められている場合には譲渡制限(例えば株主総会や取締役会の決議)を受ける。

譲渡の際、新株主の権利毀損を避ける様、以下の手続きを行う旨の規定がある。

株式譲渡書作成

株式譲渡書を会社へ提示する

株券を提出、新株券の発行を要求する

株主名簿の書き換えを要求する

株主総会 株主総会の決定事項と規定されているのは①基本定款(社名、所在地、登録資本、会社目的)変更②付属定款(会社の規則)変更③取締役任命および解任④取締役数・報酬決定⑤財務諸表・事業報告承認⑥配当決議⑦監査人選任・報酬決定⑧増資・減資決議⑨解散決議⑩合併決議とされている。

定時総会および臨時総会 法人設立登記後の総会、および年1回決算期日後4か月以内に開催される総会を「定時総会」と呼びこれ以外を「臨時総会」と云う。定時総会で通常決議される事項は、①財務諸表・事業報告承認②利益処分決議③取締役選任・退任。

以上が会社法に定められた非公開株式会社の仕組である。