タイの暦では今日、正月三が日が明けた日、である(但し原稿作成日、4月16日)。その三が日は「ソンクラーン」と呼ばれ全国的に庶民は水を掛け合って今年一年の互いの幸福を祈るという意味がある。ソンクラーン祭りを積極的に行う地方都市(北タイのチェンマイが有名)では、各村々の寺院からご本尊の仏像を担ぎ出し、また村代表の美人さんも参加しパレードを催す。かつては目上の人に対して後ろから首筋に少し水をかけ、合掌とともに「あなたが一年間幸福でありますように」という言葉を捧げ、受けた者も返礼の言葉を返す、如何にも東南アジアらしく奥ゆかしい行事であったので、私もチェンマイまで出かけこの様な行事に参加したこともある。素晴らしい祭りだと感じた。しかしながら昨今はゴーストバスターズばりのタンク式大型水鉄砲でこの時ばかりは無礼講と、遠慮会釈も無い水かけ戦争ごっこと化してしまった。若者は昼から酒に酔い踊り狂い、そこに祭りの意味を露ほども理解しない欧米人観光客が参戦し、更にあろうことか警察までが水かけ合戦エリアを交通規制で確保するという、全国を上げてのチャンチキ騒ぎ、欲求不満解消スペシャル・デーだ。同じ内容の記事を以前、当地の日本語新聞に寄稿したことがあるのだが、恐らく体制批判と見做されかねないということで掲載されなかった。それはいい。

先週7日、当地の日本語新聞(実は上記の記事を没にしていただいた某紙)に「1日あたりの電力消費量、記録を更新」という記事が記載された。この季節は酷暑期のピークに当たるので、当然エアコン使用量が大きく影響している。当日のバンコク最高気温は36.3度、40度を超えたエリアもある。(昨今の温暖化で、日本でもさほど驚く数値でも無いが)この日の電力消費量は2万7,056.8MWであったという。

これをきっかけにタイの電力事情を少し調べてみたのだが、電力を生むエネルギーの72.1%を天然ガスに頼っている。これは国産のエネルギー(但しその内3割はミャンマーより輸入)であるから当然であろう。次いで石炭・褐炭が18.2%、石油は僅か0.3%に過ぎない。これ以外の約10%は水力、再生可能エネルギーおよび輸入電力、となっている。(2010年、エネルギー省のデータによる)

この様な現状から、この国においてもエネルギーの多様化輸入依存度低下や環境対策として、エネルギーの多様化政策を積極的に進めている。方向としては再生可能エネルギー、クリーンコール・エネルギー(技術革新による低炭素化化石燃料発電)、バイオマス、小規模水力が挙げられている。原子力の計画も進められていたが、2011年において凍結された。

再生可能エネルギーについては、依然安定供給やコストの面で改善を要求されるものであるが、2021年において全電力消費量の約25%まで引き上げる計画だ。メインの目的以外にも①遠隔地農村住民の発電・燃料生産の参加(つまりサトウキビを資源とするバイオマス等)②政府の発電・送電コストの軽減を謳っている。

目標を達成するため、1992年には省エネルギー促進法(2007年に修正)を定め、エネルギー効率化・再生可能エネルギー・プロジェクトに対する財政支援、促進プログラムおよび「省エネルギー促進基金(ENCON基金)」によって関連プロジェクトや研究開発などを支援し、また電力購入規則を定め民間の小規模発電事業者(SPP)・極小規模発電事業者(VSPP)が再生可能エネルギー事業を行い送電網に接続することも許可した。

 

現実に、上記の財政支援を受けた下記事業が稼働を開始している。

1ミトポン(代表的砂糖メーカー)のバイオマス発電所:原料は主にバガス(砂糖黍の搾汁後残滓)、容量65MW。

2太陽光発電所34か所、204MW(2012年)、その他48MWのプラントおよび73MWのプラントが完成(2013年)

3EGAT(電力公社)が風力タービン(1.25MW)を2基(2009年)。ウィンド・エナジー・ホールディングスが207MWの風力タービンを2基(2012年)。

 

元より大手電力会社の既得権益による圧力などは存在しないこともあり、政府の支援に応じ様々な形の計画が順調に進んでいる。またクリーンコール・エネルギーに関しては日本との技術連携が大いに期待されているのではないか。