下世話な話で恐縮だが、タイは美人の多い国である。
ただ、振り返りたくなる様な美人を見かけた時、先ず気を付けるべきことをがある。それは何か?
先ず手足の大きさと骨格(主には肩幅)を確認する。この確認を怠って異性として興味を抱いてしまうと、かなりの割合で落胆する結果を招くのでご注意いただきたい。一定レベル以上の、しかもはっきりした顔立ちの美形の方は、生物学的には男性であることが非常に多いのである。また例外的に、体格も華奢でいかにもアンニュイなかわいい顔立ちの方もいるが、これは遺伝子の問題も絡んでくるので、ここでは範疇外とする。何しろ100%の努力で創り上げた美貌であるから、生を受けた時から当たり前に持っているという油断のある女性には決して太刀打ちできない迫力というものがある。

レベルの高い方が多い、イコール裾野が広いということ、つまり圧倒的な数の女装の人たちが存在する。レスビアンの人たちも同様であるし、その生きる姿勢もオープンでおおらかである。制服姿の男子高校生(DK??)にしてすでに派手目なメイクをしている子も見かけるし、サービス業では一定割合をゲイの人たちが占めており、一般に仕事上の評価も高い。
しかし日米やその他先進国の様に、人権侵害を訴えるという例はほとんど聞かない。元々この国の人たちは個人主義や個人の自由を第一に尊重するので、性愛傾向が違うという理由で差別を受けることが非常に稀なので、隠す必要がそもそも無いのだろう。私自身、公私を問わずご縁がある訳だが(特にお近づきになろうという意図は無い)、友人から茶化されることはままあるにしても、色眼鏡で見る、という言動は全く目にしない。
興味のある方は、サイアム・パラゴンという最高級デパートに足を運んでみると良い。一階の化粧品フロアで働く店員さんの、恐らく3割くらいは女装の人たちである。これはタイ女性が、彼らの美を求める真摯な姿勢を認めている、という証左であると思う。
日本で話題になった同性同士の婚姻は、元々庶民の間では法律上の婚姻に拘らない習慣から、これも大きく取り上げられることはない。病院での面会を拒否される様な民間レベルの問題も、これは想像でしかないが、病院側に同居人なりカップルであるなりの説明をすれば問題無く受け入れられるのでは無いだろうか?

この国で勤務されている数万人の日本人駐在員の方々も、おそらくここで述べたことに象徴される、(あくまで「象徴される」であって、直接的に同性愛者が多いから住みたい、という例は除く)この国の人たちのこの様な大らかさ、言い換えればタイ社会の持つ包摂性に一種の安らぎを感じ、「タイに住み続けたい」と考える方が非常に多く、日本への帰任後、転職してまでも再びタイで働くという例はよくある。もちろん100%心地良いばかりではなく、逆にこちらも常に大らかな態度を求められるという無言の圧力を感じながら、まさにそのことが一面、我々日本社会をバックボーンとする者の病弊なのかも知れないと自問自答してみたりもする。
街は発展し肥大化、都市化が進み、便利さと引き換えに失ってゆく、云わば「タイの心」という様なものを目にしながらも、それでも信仰心を基盤とした健全な包摂性をこの社会が失っていないということであろうと、半生をこの地で過ごしながら、依然部外者である私も考えることがある。