多くのメディアで取りざたされているAEC。それは欧州EUのアジア版とも云われる、「統一通貨は設けない」「ヒトの移動は熟練労働者に限定」という緩やかな結びつきにより経済の活性化を目指すという特色を持つ人口6億人を超える一大経済圏が誕生する。本年内の実行がすでに決定事項で、域内の域内10か国が一つに纏まり様々な産業分野での取り組みが始まっている。

1 ヒト・モノ・カネ移動の自由化と競争力のある経済地域

関税の撤廃であるが、先発加盟国であるタイ・シンガポール・マレーシアにおいては順調に進められており、2010年より0%が達成されており、2015年内には後発加盟国に於いても原則撤廃という方針が決定。だが後発国にとって関税収入は重要な歳入であることから、新たな非関税障壁が設定される可能性は否めないであろう。

モノの移動における重要ファクターである主要インフラであるが、経済回廊の整備工事はほぼ完了している。東西経済回廊(ベトナムからラオス、タイ、ミャンマーを結ぶ)、南北経済回廊(中国雲南省からバンコクを結ぶ)、南部経済回廊(ベトナム、カンボジアからバンコク結ぶ *バンコク~ミャンマー・ダウェーを開発中)これを見るとすべての物流の中心となる国がタイなのである。

この結果によって、現在製造業が投資を進めているのがタイ・プラスワンのカンボジア、ミャンマーであり、すでに拠点をタイに置くメーカーが、人件費の安い周辺国で行なわれた労働集約部分の製造品を、タイの拠点へ陸送し完成させるサプライチェーンの構築を目指している。また新規投資だけではなく、関税撤廃による競争力強化により、部品メーカーが域内各国において市場開拓に乗り出す例は格段に増えてゆくであろう。AECの大目的の一つは、これらの域内協力によってコスト削減を図り、アセアンを競争力のある経済地域に押し上げることである。

モノ以外の移動、「投資」や「労働力」については、滞っていると言わざるを得ない進捗状況である。それぞれの国内法により外資規制が定められているカンボジア以外の加盟国に於いては、現状ロジスティックス等(外資比率70%までの緩和)ほんの一部の分野でしか実現されていない。

労働力についても、熟練労働者のみが当初より対象となっている。現在、専門8業種であるエンジニアリング、看護、建築、測量、会計、開業医、歯科医、観光について協定が締結されているが、実行には至っていない。

2 公平な経済発展とグローバル経済への統合

公平な経済発展については中小企業支援等のプログラムを展開して居るものの、現状域内国のGDP格差が非常に大きく、先ずは消費意欲旺盛な主要国の都市圏における中間層の拡大、所得の増大による大市場としてのプレゼンスを築くことが中心課題となるであろう。

グローバル経済の統合という意味では、周辺地域間において、すでに「自由貿易協定 FTA」が締結されている。

3 日系企業にとってのAEC

製品やサービスにおいて抜きん出ている日系企業にとっては、 当然のことながら今後大きなビジネスチャンスとなることは間違いない。しかし現状では域内主要国の大企業が域内投資を積極的に展開し、機動力を示しており、高品質製品の生産に特化した日本勢はその機動性に於いて遅れを取っている。今後は求められるのは、現地市場、消費者の特性を把握した上での積極的でスピーディーな事業戦略がではないだろうか。

以上に述べた通り、AECの体制は構築途上。これからも緩やかに進展していくことは間違いない。