年が明けても当地への進出の勢いは止まらない様だ。私も今週仕事始めとなったが、進出相談の依頼は途絶えない。

当地に限らず海外への進出が初めてという経営者の方にとっては仕方のないことなのだが、何の相談を誰に持ち掛けるのか、それぞれ先方が得意とする守備範囲も分析せぬままに、相談相手が日本人であれば藁をも掴むように頼ってしまいがちだ。

例えば法人設立登記、投資委員会の認可申請、事務所や工場の物件探しから開始し、後に会計事務所や、輸出入が絡めば通関業者を探す訳だが、実際には契約やそれぞれの申請手続きのスケジュール検討の段階から会計税務や通関事務(製造業であれば)の正確な情報を重要視すべきだと思う。

ところが実例を見ると、業者の言うまま土地購入や賃貸契約、設備発注などを進めてしまうと、それぞれの受け手側は他のカテゴリーの知識に欠け、自身の契約を急がせることに終始するのはビジネスである以上当然のことで、結果的に下記の様に大きな浪費を生んでしまうケースを多く見受ける。

法人登記の為、工場物件の賃貸契約を先行し、投資委員会の奨励証書待ちで、莫大な金額のカラ家賃を半年にわたり支払う。さらに輸入関税減免の為、設備が完成しているにもかかわらず日本から出荷することもできない。この様なケースでは、投資委員会の認可申請を仮に個人名で先行させ、その進行に合わせ他の手続きを計画すれば何の問題もない。

会計税務に於いても、殆どの出費に伴う付加価値税(VAT)および源泉徴収税(非常に多岐にわたる)の基礎知識が無いと、還付を受けられる筈のものが対象外となり、また支払う側の源泉徴収義務違反として支払者が自己負担することになってしまう。この例は実に多い。

結果として、先ず相談相手の受け持つカテゴリーをはっきり確認し、頼りきりになるのではなくすべての情報を確認、整理して自らじっくりと計画を練ることが最重要だということになる。そのカテゴリーは具体的に、

 設立支援コンサルタント会社: 法人設立を含めた官公庁、投資委員会認可申請(ただし奨励証書取得まで)、物件探しから契約までのフォロー

 不動産業者: 物件探しから契約までのフォロー

 会計事務所: 会計税務(アドバイスから申告代行、記帳代行あるいは顧問業務)上記コンサルタント業を兼ねる場合も多い

 通関業者(フォワーダー): 輸出入・通関手配および税関・関税に関わるアドバイス

*留意すべきことは、同じ税ということで関連はあるのだが、税務署に関わることは会計事務所、税関にかかわることはフォワーダーの管轄である。

 人材紹介会社: 文字通りの業務(ただし他にも人材を探す方法はある)
 法律事務所:  法務・労務

 当たり前過ぎて礼を失することを承知の上でアドバイスさせていただくとすれば、、「日本を離れれば皆ただの外国人、投資家はお客様だが神様ではない。業者から情報を得ることは難しくないが、判断・交通整理し決裁するのは経営者、ということである」