最近の企業海外進出ラッシュ、それに伴う日本国内の税収減少による税務側の調査強化策および現地法人側の対応について報告しよう。

近年、日本における税務調査の際に特に在外現地法人に関わる費用を重視する傾向が目立っている。
下記が主な内容である。

①現地法人設立までのFS(フィジビリティー・スタディー)費用、つまり現地の投資環境・市場調査のための出張費、法律・経営管理の情報収集のための現地コンサルティング・専門家費用等、法人化以前に発生する費用。

②現地法人設立やその他官公庁手続きに係る費用、付随するコンサルティング費用。

③現地法人設立後数年間に於ける技術および営業支援を目的とした出張費(渡航費用および滞在費用)。

④現地駐在員の給与や社会保険料、給与の合算申告に伴う個人所得税の追加納税分。

⑤利益還元の為に交わす現地法人との長期にわたるロイヤリティー契約やテクニカルサポート契約。(日本側にとっては収益)

上記に挙げた項目についての日本側・タイ側税務署の考え方を以下に記すが、私自身、日本を離れてからの期間が長きに亘るため、日本側の情報は現地クライアントからの間接情報である。従って正確さに欠ける部分もあろうかと思う。

①日本税務署: 日本本社が現地法人の主要株主であれば基本的に本社側費用として認識されている。

タイ税務署: 現地法人設立期日以前の費用は、当然必要だと解釈されるものであっても、一切損金算入不可。発起人や株主が負担すべきものとの見解。

②日本税務署: 黙認されているケースが多い。

タイ税務署: インボイス・領収証を設立期日以降に発行すれば、当然な必要経費として損金扱いされる。

③日本税務署: 基本的に現地法人運営のための費用と認識されている。

タイ税務署: 基本的に出張費はタイ法人の社員、ローカル社員か、日本人であれば現地の労働許可証を取得し現地法人から給与を支給されている者が現地法人所在地から出張する場合に限るという見解。

④日本税務署: 日本に滞在する被扶養者の生活費および社会保険料等々の費用以外は
現地法人の費用と考える様だが、ケースによりネゴしている状況。

タイ税務署: カレンダー年の内180日以上現地に滞在する者はタイ居住者と看做され、その所得総額(在外不動産や外国法人に於ける地位を源泉とする所得等を除く)は所得を得た国に関わらず全額をタイにおいて申告し、納税後それぞれの国において相殺(あるいはこの処理を前提として年末調整を行う)するという制度。

⑤日本税務署: 本社の収益となるので当然問題無し。

タイ税務署: ある製造品目・商品について、法人の利益が上がってから契約する場合には親子間の利益移転と看做され損金否認されることが多い。逆にこの支出により大きく法人税が減額または決算が赤字化する場合にも「得べかりし税収が損なわれた」ということで追徴を受けることがる。製造・取引開始時に契約を交わし、相当な支払免除期間を設定する等々のテクニックが必須と云える。