最近のタイにおけるトピックは、やはり昨年10~11月に起きた大洪水の被害および日系企業のその後だろう。
都庁と政府が協力した水害回避の努力により、バンコクの心臓部である都心だけは被害を免れた訳だが、在タイ日系企業約8,000社の内、約1,000社が被災した。

「東洋のデトロイト」(全てにおいて西洋は東洋に比して優れているという発想に立った言い回しであるが)と呼ばれるタイには、代表的な自動車メーカー全社が進出しており、今や当地の基幹産業となっている。メーカーの内、直接浸水被害に遭ったのはホンダ1社(アユタヤ県)だが、協力工場であるサプライヤーがの多くが被災した為、一時はすべてのメーカーが操業停止を強いられた。

しかし水が引いた直後から各工業団地、各工場では復興、設備の整備・入れ替えが大急ぎで行なわれ、本年1月度の自動車生産高は、ホンダを除いては災害前と同様にまで回復した。また3月26日付にてホンダの生産再開も発表されたところだ。発生当時は被災企業が他国へ移転してしまうという可能性も指摘されたものだが、当地における大規模なサプライチェーンは、自動車生産メーカーが動かない限りゆるぎ無いということだ。さらにそれぞれのメーカーの追加投資意欲は引き続き旺盛であり、三菱自動車も本年タイ東部に新工場、トヨタも2013年に新工場、業種違いだがキャノンも2月に新工場着工との発表があった。さらに先月、多くの協力工場のタイ進出相次いで発表されている。

被災前の自動車生産高は年間約180万台と公表されていたが、2012年においては200万台の予測は軽く超えるだろうと云う業界関係者の声が多い。現在の市場ターゲットは洪水対策としてピックアップの国内販売、エコ・カーと小型車の国内販売と輸出であると云われている。
タイ国投資委員会(BOI)の発表によると、昨年日本からの直接投資は、件数にして前年度比53.8%増(560件)、金額では85.6%増(1,938億4,300万バーツ)とのこと。また被災企業に対する優遇措置として、企業が移転せず同プラントに留まり事業を再開する場合、法人所得税を8年間免除、以降の3年間は半額の減税、という方針を打ち出したということも事業継続意思の後押しをしたであろう。

災害の主な原因は、雨量の多さはもちろん、治水の失敗が指摘されている。つまり北部のプミポン・ダムとシリキット・ダムからの放水量管理の連携が上手くいかなかったこと、また北部からの雨水をシャム湾に流す為の放水路の整備が不完全であったことだ。この見方に対し現インラック政権は被災後直ちに洪水対策の委員会を設置、上記ダムの管理強化、放水路となる各運河の管理システムを確立し、再びの災害は無いと断言した。
更にかなり以前より計画されながら施工に至っていない大規模な運河掘削計画を引き続き検討してはいるが、これは予算の問題で難航している。
被害を受けた工業団地サイドも、すでに2m以上の防護壁を団地の周囲に設置するなどの対策を実施した。
また、良い意味で洪水慣れをしており、自宅の階下が水没しても冷静な行動のとれる当地の庶民の大きな助力が無かったならば、今回の早期復興は有り得なかったことを付け加えて置く。